限りなきがんへの挑戦−定期がん検診のすすめ−

 日本人の死亡原因の60%を三大疾患(がん、心臓病、脳卒中)が占めています。そして、その早期発見、早期診断や治療のために最先端医療を駆使して、めざましい発展をとげているのが21世紀の医療現場なのです。
 がんへの闘いは、外科的手術を初め抗がん剤、放射線、アイソトープ、マイクロ波、レーザー光線、ガンマナイフによるがん細胞の照射など、様々な方法でアプローチが行われていますが、決めてとなるものはありません。
 ありとあらゆる人間の臓器は、進行した悪性腫瘍に侵されると、多くの場合再発を繰り返し、転移巣を拡げてやがて死を迎えるということでは、共通した宿命です。
 ただ言えることは、近年のがん治療では胃を含む消化器がん、乳がん、子宮がん、前立腺がん、甲状腺がんなどにかなり良好な治療効果がみられているということです。これは、早期診断・最先端医療のおかげです。



●がんによる死亡率の増加
 日本対がん協会の統計によれば、平成12年のがん死亡者数は前年度より4,843人増えて、295,388人となっています。正確な診断による、確実な早期発見の増加による結果かもしれませんが、がん死の実数は増大傾向にあることは間違いありません。がんの罹患率から考えると、がんはやはり、死亡率の極めて高い、怖い病気と言えるのです。

●がんの予防と早期発見
 過去半世紀の間、各種のメディカル・エレクトロニクスの応用や遺伝子治療や免疫療法も含めた、多彩な治療にもかかわらず、がん死亡の低下に結びつかなかったことは残念です。
 がんで死なないためには、予防(一次予防)と早期発見(二次予防)に努めることに尽きるのです。一次予防は、がんのリスク・ファクターを知り、生活習慣の改善に努めることです。また、最も大切なのはやはり早期発見と言わねばなりません。統計学的にも、地方自治体によるがん検診のうち、子宮頚部がん、大腸がん、胃がんに関しては、検診の有効性が確実ですし、乳がんにはマンモグラフィー(X線乳房撮影)を、前立腺がんにはPSA(腫瘍マーカー)血液検査を加えて、さらに有効性を高めるように改善されるようになりました。

●がん検診の正当性について
  一時「がん検診の有効性に疑問アリ?」といった誤った報道がなされたことがあります。「予防接種のワクチンは危険」といった、一面的な情報理解と同じであり、正しく客観的に、冷静に事実をとらえる必要があります。
 がん検診が有意義であることを実証するには、検診を受けた集団のがんによる死亡率が、受診しなかった集団より低いことを統計的に明らかにする必要があります。
 平成10年、厚生労働省が「がん検診の有効性評価に関する研究班」を発足させました。その結果、地方自治体で広く行われている胃・大腸・子宮・乳房・肺の部位別検診の現状結果が発表されています。
 それによると、胃・大腸・子宮頚部のがんに対しては、有効性が「証明されている」または「強く示唆されている」として効果が認められています。
 子宮体部がんは、有効性を評価する研究が十分に行われていないことから、結論は先送りになっています。
 肺がんは、日本での成果は有効性を示す傾向がみられていますが、世界的には否定的な成績が多いことから、検診法の改善が必要です。さらに乳がんについては、現在の視診・触診だけではなく、欧米で行われているマンモグラフィーによる検診が有効性を高める結果につながると結論されています。がん検診を、正しい評価の集大成として評価をまとめると、表1のようになります。発表当時マスコミで大きく取り上げられましたが、一部の報道の不正確さもあって、国民に必ずしも十分に理解されなかったようです。
がん検診の有効性(表1)
部位 検診方法 有効性の判定
胃癌 間接レントゲン
有効性が強く示唆されている
大腸癌 便潜血検査 有効性が証明されている
子宮頚癌 細胞診 有効性が証明されている
子宮体癌
細胞診 有効性を評価する研究が行われていない
乳癌 マンモグラフィー
視触診
有効性評価が得られている
有効性に関して十分な評価が行われていない
肺癌 胸部レントゲンと喀痰細胞診 日本の研究では有効性を示唆しているが、
世界的には否定的な成績が多い
(「固形癌の疫学」より:平野吉孝ハーバード大客員研究員)

●がん検診を武器に!
 すべてのがん検診を、老人保健法に基づく国庫補助の対象からはずして一般財源化する措置や、医療特区を導入しようとする国の方針をうけて、高度先端医療機器を集積した、PETセンターが横浜でスタートする予定です。しかし、二次予防のがん検診は身近な地方自治体で定期的に行われていますから、先ず気軽にお住まいの地域で受診されることをお勧めします。がんによる死亡率は、男性の胃がん、女性の胃がんと子宮がんを除いて年々増加しています。定期がん検診による早期発見こそ、唯一がんに挑戦する武器なのです。



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