季節の健康情報

潰瘍性大腸炎(UC)について


1.
潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜に炎症を引き起こし、潰瘍などを生じることにより、粘液便、血便、下痢、腹痛などの腹部の症状をきたす病気です。
2.
はっきりとした原因は不明ですが、遺伝的な要因や食事や腸内細菌などの環境的な要因に免疫機能の過剰・異常が生じ、病気が発症、持続するものと考えられています。
3.
日本における潰瘍性大腸炎の患者数は年々増加していると報告されており、現在約15万人以上の患者さんがいると推定されています。患者数に男女差はなく、20-40歳代に多く発症します。
4.
潰瘍性大腸炎は厚生労働省により難病に指定されているため、非常に深刻な病気という印象を持たれるかもしれません。しかし潰瘍性大腸炎は良くなった状態を維持(寛解維持)できれば、日々の生活にあたっては大きな制限を受けることなく、一般の方と同じライフスタイルを送ることが可能です。
5.

症状

下痢、下血、血便、粘液便などの排便異常が主体で、必ずしも腹痛は伴いません。重症になると、貧血や全身倦怠感、頻脈、高熱などの全身状態の低下を伴ってきます。貧血や発熱、頻脈は重症度を決めるのに重要な指標になります。また口内炎、関節炎、皮膚症状(結節性紅斑、壊疽性膿皮症)、眼症状(虹彩炎)などの腸管以外の臓器に合併症(腸管外合併症)を生じることもあります。
6.

潰瘍性大腸炎は発症時のみでその後再び悪化することがない初回発作型、症状の悪化と寛解を繰り返す再燃寛解型、症状が持続する慢性持続型の3つに分けられます。再燃寛解型が多く、当院での2015年現在慢性持続型の割合は約12%であり(図1)、これまでの本邦のデータ(約30%)に比べ慢性持続型の割合が少ない傾向にあり、治療の進歩によるものと考えられます。

図1.潰瘍性大腸炎の病型(2015年)

7.

診断

1.問診
上記の潰瘍性大腸炎の症状(粘血便や下痢)が持続、反復することが診断基準の1つに挙げられています。潰瘍性大腸炎と間違えやすい病気として感染性腸炎がありますが、多くの場合1週間以内に症状が改善、消失する点、便培養検査、内視鏡検査などで区別します。 すでに診断された患者さんの場合、自分の体調がどのように変化したかという情報は、診断や治療を行っていく上で重要なことです。診察では1日の便回数、血液や粘液が混じっているか、便の性状(軟便、泥状便、水様便)、腹痛の有無などを問診します。

2.大腸内視鏡検査
大腸粘膜の炎症範囲、程度を判断したり、よく似た症状をきたす他の病気と区別するのに必要な検査です。必要に応じて生検(顕微鏡で調べるために、病変の一部の組織を切り取ること)を行うこともあります。粘膜の性状や生検による組織検査は診断基準の1つに挙げられているので、発症した際には大腸内視鏡は必要な検査です。また診断された後も治療方針を決定するのに重要な場合もあります。また長期に炎症が持続している状態では大腸がんが発生することもありますので、定期的に大腸内視鏡検査を受けることも大切です。

3.血液検査
病気の重症度や病勢を把握するのに重要な検査です。血液検査では1)炎症の程度を把握(CRP、赤血球沈降速度(赤沈、血沈)、白血球数)、2)貧血の程度を把握(ヘモグロビン値、赤血球数)、3)栄養状態(総タンパク、アルブミン値)を把握することが可能です。ただし潰瘍性大腸炎では炎症が軽症〜中等症ではCRPが上昇しないことも多く、他の検査や症状などを合わせて総合的に判断します。

4.便潜血検査
見た目に正常な便であっても、少量の血液が混じっていることがあるため、便検査を行うことがあります。もともとは大腸がんの発見に使用されている検査法ですが、便潜血検査の結果はある程度内視鏡の重症度と関連があるとされており、炎症の程度を把握するために体の負担が少ない点で注目されています。

8.

治療

治療法を決定するために炎症の範囲と重症度を評価します。重症度は1日の便回数、血便の程度、貧血の程度、発熱(37.5度以上)、頻脈(脈が1分に90回以上)、赤沈の程度で決定され、軽症、中等症、重症、劇症に分類されます。厚生労働省難病研究班の治療指針を簡略化したものを図2に示します。


図2.潰瘍性大腸炎の内科治療

9.

1.軽症から中等症例
第1選択薬として、5ASA製剤(サラゾピリン、ペンタサ、アサコール)が投与されます。直腸炎型や左側大腸炎型では、サラゾピリン坐薬やペンタサ注腸薬が選択あるいは併用される場合もあります。改善が得られない場合には、ステロイド(経口プレドニン)が考慮されます。経口プレドニンは30-40mg/日の量で開始し、1〜2週間の割合で徐々に減量していくことを基本としています。ステロイドは治療効果が現れるのが速やかであり、治療2か月後で約80%以上に効果がみられます。副作用として感染症や消化器症状、顔面が丸くなる(ムーンフェイス)症状などがあります。長期使用により骨粗鬆症や糖尿病発症のリスクがありますが、基本的に当院では3-4か月以内に中止するようにしています。

中等症ではステロイドとの併用または単独で、血球成分吸着・除去療法を選択することもあります。透析のように血管に針を刺しで炎症をひきおこす白血球の一部を除去する方法です。日本で開発された治療法で副作用が少ないのが利点ですが、効果発現が緩徐なこともあります。基本的に計5回を1クールとしますが、効果に応じてもう1クール追加を考慮します。

2.重症例
強い腹痛や高熱、全身的な消耗が激しく厚生労働省の診断基準の重症に分類されるような症例は、入院での治療が適応となります。絶食の上ステロイドを点滴で使用します。ステロイドの効果が現れない例や、内視鏡にて潰瘍が非常に深い例や粘膜の脱落が著しい例では経口プログラフ、レミケードの点滴静注、ヒュミラの皮下注射を考慮します。経口プログラフとレミケードの治療効果は50%前後ですが(図3)、難治例に使用していることを考えるとまずまずの成績と考えられます。

図3.タクロリムスとレミケードの治療成績

これらの療法により寛解(症状が落ち着いて安定した状態)になっても容易に再び病状が悪化する例やステロイド依存例(ステロイドを中止すると症状が悪化する)、重症例で治療により症状が改善した例などでは、寛解を維持する目的で少量の免疫調節剤(ロイケリンまたはイムラン)を使用します。

3.手術療法
潰瘍性大腸炎は大腸のみを侵す病気ですので、手術で大腸を全部取ってしまえば基本的には根治できます。しかし、大腸は水分を吸収し、便を形作る働きを担っていますので、手術後の便の回数は少なくても5〜10回のことが多いようです。穿孔、生命にかかわる大出血、薬物療法に反応しない重篤な症例、がん化症例は手術が必要です。中等症以下であっても生活の質(QOL)を損なう症状が持続するものや、ステロイド依存症例などの難治例も対象となります。

10.

生活上の注意

風邪薬・鎮痛剤について
多くの風邪はウイルスによるので基本的には抗菌薬の必要はありませんが、対処的に咳を落ち着かせたり、鼻の分泌を抑えたりする薬剤はあまり腸には影響はないと考えられますので使用してよいと考えます。ただし、市販の風邪薬は病院で処方される薬剤より成分は弱いことが多いのですが、腸炎を悪化させることも見受けられます。できれば医師が処方した薬剤を服用されたほうが良いと考えます。

ワクチンについて
ステロイド、プログラフ、レミケード、ヒュミラを使用している場合には生ワクチン(風疹、麻疹、流行性耳下腺炎ワクチン、水痘ワクチンなど)といわれるワクチンを投与する場合は一時的にこれらの治療を中止する必要があります。潰瘍性大腸炎と診断された際には上記の薬剤を将来的に使用する可能性もあるので、抗体が陰性であれば免疫抑制剤を使用する前にワクチンを投与しておくことも必要です。


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