健康と社会

IgA血管炎(ヘノッホ-シェーンライン紫斑病)

1.
IgA血管炎(ヘノッホ-シェーンライン紫斑病)は触れることのできる皮膚の紫斑(palpable purpura)がみられ、同時に腎炎、腹痛、関節痛がみられることのある疾患です。
2.
免疫にかかわるIgAという抗体が関与していると言われており、2012年にアメリカのChapel Hillで開かれた血管炎の国際会議でヘノッホ-シェーンライン紫斑病からIgA血管炎に呼称が変更されました。 アナフィラクトイド紫斑病やアレルギー性紫斑病とも言われることがあります。
3.
10歳以下の小児に多く、4歳にピークがあるといわれています。季節的には春に多く、約2/3で上気道の先行感染があります。
4.
アメリカの報告では17歳以下の小児の人口10万人につき約20人に発症すると言われており、4~6歳が発症のピークと言われています。成人に関するデータは少なく、IgA血管炎患者のうち25から30%程度が成人であったとの報告があります。日本での正確なデータは少ないですが、アジア人、白人は黒人より発症しやすいといわれています。
5.

症状

皮膚の触れることのできる紫斑、腎炎、腹痛、関節痛がIgA血管炎の4徴です。皮膚症状は初期症状にみられることが多く、約70%の症例でみられます。関節症状は60~80%の症例、消化器症状は60~70%の症例、腎症は報告によりまちまちですが20~60%の症例でみられます。

1.皮膚症状
触れることのできる紫斑が下腿や殿部にみられます。紫斑は数日以内に増加し、色調と隆起は均一です。掻くなどの外的刺激により盛り上がった紫斑が刺激に沿って線上に配置するケブネル現象(Köbner phenomenon)が出ることがあります。

2.関節症状
膝関節や足関節など下腿の大きな関節に疼痛がみられることが多いです。関節リウマチと異なり変形を残すことはありません。

3.消化管症状
腸管壁に存在する血管の炎症に起因する悪心、嘔吐、腹痛、下痢、血便などがみられます。皮膚症状とほぼ同時期に起こり、突然の腹痛(腸管アンギーナ)で病院を受診することもあります。

4.腎症
検尿で尿潜血や尿蛋白を指摘されることが多いです。皮膚症状出現後1カ月以内が多いと言われています。時に重症な腎炎(急性糸球体腎炎、ネフローゼ症候群)に進行し浮腫を呈する場合もあります。

6.

診断

典型的な4徴がそろう場合には診断が容易ですが、非典型例、特に皮膚の症状がない場合には診断がつきにくいことがあります。いくつかの分類基準、定義がありますが、2012年のChapel Hill分類、2006年のヨーロッパリウマチ学会/ヨーロッパ小児リウマチ学会での分類基準、1990年のアメリカリウマチ学会の分類基準を示します。

Chapel Hill分類(2012年)
小血管レベル(主に毛細血管、細静脈あるいは細動脈)の血管炎の中の免疫複合体性血管炎(Immune complex vasculitis)に分類され、血管壁にIgAのサブクラスであるIgA1優位の免疫沈着がみられる血管炎です。典型例では皮膚、腸管に病変があり、関節炎を引き起こします。病理組織学的にIgA腎症と区別のつかない糸球体腎炎を合併することもあります。

ヨーロッパリウマチ学会/ヨーロッパ小児リウマチ学会(2006年)の分類基準
触れることのできる紫斑があり、それ以外の以下4項目のうち少なくとも1項目を満たせば分類可能です。

1.腹痛 (通常広範囲で急に生じる)

2.生検におけるIgA優位の沈着(生検部位は皮膚、腎臓、腸管などどこでもよい)

3.関節炎(急性で関節部位は問わない)あるいは関節痛

4.腎臓の関与(血尿 and/or 蛋白尿)

アメリカリウマチ学会の分類基準 (1990年)

基準項目
定義
1. 触知できる紫斑
軽度隆起性「触知性」の出血性皮膚病変(血小板減少を伴わない)
2. 初発年齢≦20歳
最初の症状出現は20歳以下
3. 腸管アンギーナ
しばしば食後に悪化するびまん性腹痛もしくは血性下痢で診断される腸管虚血
4. 血管壁への顆粒球浸潤
病理組織学的に細動脈あるいは細静脈の血管壁に顆粒球浸潤がある

2つ以上の基準項目を満たすときに分類します(感度87.1%、特異度87.7%)。

診断に特異的な検査はありませんが、次のような検査所見がみられることがあります。

7.

検査所見

1.皮膚病理検査
紫斑がみられる部位を生検すると、壊死性血管炎の所見があり、蛍光抗体直接法にてIgAの沈着がみられます。

2.腎病理検査
尿所見異常がある場合は腎生検を行う場合があります。組織学的な変化は多彩ですが、蛍光抗体直接法にて糸球体のメサンギウム領域へのIgAとC3の沈着があります。病理組織学的にはIgA腎症と鑑別することは困難です。

3.血液検査
特異的な検査項目はありませんが、血清のIgAが上昇している場合があります。また、腎臓の炎症が強い場合、血清総蛋白・アルブミンの低下、血清クレアチニンの上昇がみられる場合があります。先行感染がある場合、A群β溶血性連鎖球菌の抗体である抗ストレプトリシンO抗体、抗ストレプトキナーゼ抗体が上昇していることがあります。 腹部症状が出る症例では、血液を固める際に必要な凝固第XIII因子が低下している場合があります。

4.尿検査
尿蛋白や尿潜血がみられる場合があります。

8.

治療

多くの症例では自然寛解がみられるため、経過観察と対症療法を行います。

副腎皮質ステロイドの使用については確立した見解はありませんが、腹痛の持続時間を短くする、腸重積のリスクを減らす、再発のリスクを減らす、腎病変が発症するリスクを減らす等の報告があります。重篤な腹部症状、腎機能障害や強い尿所見をがある場合、副腎皮質ステロイドや免疫抑制剤などを使用する場合があります。

図1. 診療アルゴリズム
(日本皮膚科学会雑誌.118(11):2095-2187,2008から引用)

DDS:diamino-diphenyl sulfone(レクチゾール®、Dapsone)
NSAIDs:非ステロイド抗炎症薬

軽症の場合には対症療法のみで改善しますが再発することもあるため注意は必要です。まれですが、腎機能障害が進展し、腎不全に至ることがあります。

生活上の注意

多くの場合、自然に軽快していきますが、再発することもあるため定期的な受診の上血液検査や尿検査を行っていくことが大切になります。


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